技術情報

  レーザー概要   レーザーは"LASER"と記され、"Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation"という英語の頭文字を並べたもの。意味は、誘導放出による光の増幅 であり、高いエネルギー状態から遷移するときに発生する光が増幅されて発振される人工的な光のこと。
  電子がより高いエネルギー準位に状態から下位のエネルギー準位に移るとき、光子を放出する。反対に、下位から上位へ遷移するときには光子を吸収する。レーザーはこの放出された光子を増幅させることで発振する。
  具体的には、ポンピング装置からの励起エネルギーによってレーザー媒質中で反転分布が形成される。下位準位に遷移するときに光が放出される。共振器の鏡に対して垂直に進む光が鏡で反射を繰返し、2枚の鏡の間を往復することになる。この行程で他の原子に衝突して誘導放出を誘起する。このように増幅された光はある閾値を超えたときに部分透過鏡から放出される。このような光フィードバックによる増幅・発振がレーザーの原理である。


     
  レーザー
構成要素
  レーザー発振器は、光フィードバックによる発振を実現するために、基本的には
  ①光を発生させる媒質、
  ②媒質をポンピングする装置、
  ③共振器
 から構成されている。


     
  固体レーザー   媒質が固体であるレーザーの総称。結晶に他の原子を置き換え(ドープ)したものが多い。
  YAGにネオジムを添加したNd:YAGレーザー、 ルビー結晶にクロムを添加したルビーレーザー、 サファイアにチタンを添加したチタンサファイアレーザーなどがある。
  小型で高利得、安定動作が特長。ただし、蓄熱の問題あり。発振波長は赤外から紫外まで広範囲。


     
  液体レーザー   媒質が液体であるレーザーの総称。液体材料は無機液体、有機色素溶液などが使われる。媒質の交換が容易であり、媒質の密度が高いため小型で高利得。媒質を循環させながら使用。発振波長は近赤外から近紫外。レーザー分光法や同位体分離等の応用分野で最も実用的に使われる。励起方式は、レーザー励起とフラッシュランプ励起方式。


     
  気体レーザー
(ガスレーザー)
  気体の分子、原子、イオンを媒質として用いるレーザーの総称。発振波長は遠赤外から紫外で、媒質としては、炭酸ガス(9~11μm)、ヨウ素(1.32μm)、ヘリウムーネオン(0.6328μm他)、アルゴンイオン(0.275~1.09μm他)、クリプトンイオン(0.338~0.859μm他)、XeF(0.351μm)、XeCl(0.308μm)、KrF(0.248μm)、KrCl(0.222μm)、ArF(0.193μm)などがある。発振媒質の交換は容易。品質を保つためには定期的な交換が必要。


     
  半導体レーザー   媒質が半導体であるレーザー(固体レーザーとは区別される)。別名LD(レーザーダイオード)。反転分布を形成するためpn接合の両端から電子と正孔を加え、これらが再結合するときにバンドギャップに相当するエネルギーが光子として放出される。
  一般に共振器を半導体基板と平行に作り、へき開した側面から光が出射する構造(端面発光レーザー、EEL)である。一方、半導体基板と垂直に出射する構造のレーザーを面発光レーザー(SEL)と呼び、特に共振器を半導体基板と垂直に作った面発光レーザーを垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)と呼ぶ。
  低出力、安価、小型である特徴がある。発振波長は、AlGaAs:650~905nm、InGaAsP:1000~1700nm。素子温度の変化により中心波長が変化するため、電流、電圧フィードバックで制御することが多い。


     
  自由電子レーザー(FEL)   真空中で高速(ほぼ光速)に移動する自由電子にアンジュレータにより磁界を加え、共鳴的な相互作用によって発生する放射光(シンクロトロン放射光)を利用するレーザー。磁場強度、電子のエネルギーを変えることで発振波長を連続的に変更可能。真空紫外、X線領域においては光共振器を構成するための高反射率を持つ鏡が存在しないため、自然放射の自己増幅(Self Amplified Spontanious Emission:SASE)が採用される場合が多い。X線領域の波長のFELをX線自由電子レーザーと呼ぶ。
  0.1nm以下の波長でのSASEによるXFEL装置は、米国(SLAC-LCLS)、日本(理研SACLA)、欧州(European XFEL)にて建設が進められている(2008年時点)。SACLAは2011年6月10日に波長0.10nmのX線レーザーを発振。


     
  レーザー
出射形態
  ①連続発振(CW): 連続的にレーザーが出射される形態。
②パルス発振: レーザーがパルス状にON/OFFを繰返し出射される形態。


     
  YAGレーザー   媒質にYAG(Yttrium Aluminium Garnet)の結晶を用いるレーザーの総称。パルス発振の場合はナノ秒以上の比較的長いパルス幅のレーザーを指すことが多い。媒質としてネオジム(Neodymium)をドープしたNd:YAG(Yttrium Aluminium Garnet)の結晶、Y3Al5O12、4準位系)を用いたレーザーが多い。その他、主に医療用でエルビウム(Erbium)をドープしたEr:YAGレーザー(2940nm)、胆石の除去に用いられるクロム-ツリウム-ホルミウム(CTH)をドープしたCTH:YAGレーザーなどがある。同じく水への吸収が良いことからレーザーメスなど医療用で用いられるHo:YAGとTm:YAGの発振波長はそれぞれ2080nm、2010nmである。
 Yb:YAGレーザーはレーザー発振波長と励起光の波長が近いため効率が高く、また、蛍光スペクトルの幅が広い(10nm程度)ので1ps以下の超短パルスレーザーの発振が可能である。さらに、熱伝導率が高く発熱が小さいという特長があり熱レンズ効果が小さいため特性が安定しており、蛍光寿命が長いことで高出力である利点がある。
 媒質の形状は、ロッド型、スラブ型、ディスク型がある。LD励起やランプ励起が一般である。LD励起はランプ励起に比べてエネルギー変換効率を1桁程度向上させることができるといわれている。LD発光波長がYAG結晶の吸収スペクトルに近いところに集中しており効率が良いからである。一方、ランプは発光スペクトルが幅広く励起に寄与しないむだな成分が多いため非効率である。
 ジャイアントパルスを得るために、Qスイッチを用いる。Qスイッチは最初、レーザー共振器の光損失を大きくして発振を抑えておく。光ポンピングが進み、強い反転分布になった時点で共振器のQ値を急に高めることで大きなピークのレーザーを出力する。Q値を急激に高めるためにミラーの制御を行うが、この方法として回転プリズムによる機械的方法、電圧により屈折率を変化させる電気的方法、超音波により屈折率を変化させる音響的方法がある。
 発振波長に関しては、Yb:YAGは1029nm、Nd:YAGは1064nmで多くの金属が吸収しやすいため、金属材料の加工(切断、穴あけ、溶接、マーキングなど)に多用されている。LBOなどの非線形結晶による波長変換でSHG(第二高調波)、THG(第三高調波)を利用することもある。


     
  ディスクレーザー   平板状(直径数mm 厚さ200μm程度)のレーザー媒体をLDで励起して発振するレーザー。
 平面の冷却効果により安定したビーム品質が得られる。ディスク裏面には励起波長と発振波長両方の全反射コーティングがなされ、表面には両波長の反射防止コーティングが施される。ディスク自体は冷却用ヒートシンクに裏面を接着。ディスクの熱はヒートシンクから効率よく逃げ高効率の冷却効果により、熱レンズ効果によるプロファイル悪化を低減でき、結晶へのドーピング濃度を下げられるためストレスを小さくできる。ディスクへの励起光は多重反射により吸収効率を上げている。Qスイッチを付加したものもあり産業用途で利用されている。
 1993年にシュツットガルト大学のDr.AdolfGiesenによって開発された。市販のディスクレーザーは効率30%と高効率な製品もある。


     
  ロッド型レーザー   媒質が円柱状であり、周囲からLDなどで励起する。
 励起光による加熱と周囲からの冷却により、外周部が中心部に比べて冷たい温度分布が生じる。この温度分布により、中心部と外周部に密度変化(屈折率変化)が生じレンズとして働くため、ビーム品質が悪化する。


     
  ピコ秒レーザー   ピコ秒オーダーのパルス幅を持つ超短パルスレーザー。加工対象によるが、パルス幅が10ピコ秒より短いと材料へのコゲ、熱変性など熱影響が小さい加工(コールドアブレーション)ができるといわれている。これは、熱が材料深くに伝わる前に蒸発してしまうアブレーションが起こるためである。また、ピークパワーが大きいため、難加工材料へも加工ができるという特徴がある。
  レーザー媒体としてはNd:YAGやNd:YVO4などがある。同じ超短パルスレーザーのフェムト秒レーザーと比べて、同様のマイクロ加工が期待されるが装置コストが低いというメリットがある。


     
  フェムト秒
レーザー
  フェムト秒単位の超短パルスで出射するレーザー。フェムト秒のパルスを増幅させると結晶中に強度のパルスが送り込まれ、結晶や光学素子にダメージを与える。ダメージ低減のため、パルスを一旦広げて増幅し、その後パルスを縮めるCPA(Chirped Pulse Amplification) が行われる。
  原理は、一旦フェムト秒のパルスを生成し(Mode lock oscillator)、パルス伸張(Pulse strecher)、パルス増幅(amplifier)、パルス圧縮(Pulse compressor)という手順によりフェムト秒パルスを出射。パルス伸張にはファイバあるいはペア回折格子などが用いられ、スペクトル幅の広い超短パルス光を往復させ、パルス光の高周波成分と低周波成分の間に正の群遅延分散を生じさせてパルス幅を伸張する。増幅器は出力に応じて1段から多段まで様々あり、方式も再生増幅やマルチパス増幅などがある。圧縮器はプリズム、ファイバ、ペア回折格子などの方式がある。
  超短パルスレーザー加工の特長は、レーザー照射部にて、熱拡散時間に比べて、パルス幅が十分に短いので、材料への熱影響が非常に小さく、高精度な微細加工に適する。また、レーザーの電場強度が高いので、集光部にのみ多光子吸収等の非線形作用を誘起させることができる。


     
  He-Neレーザー   He-Neガスを媒体とするレーザー。励起したHe原子が、衝突によるエネルギー移動でNe原子を励起して、励起準位間の誘導放出で発振する4準位レーザー。
  発振波長:632.8nm、励起方法10mA直流グロー放電低出力、高コヒーレンス、安価、長寿命。
  1960年にイラン人物理学者 Ali Javan と William R. Bennett、Donald Herriot によって発振が成功した。


     
  CO2レーザー   CO2ガスを主体として窒素とヘリウム混合ガスをレーザー媒体としてパイレックスガラス内に封じ込め、発振する4準位レーザー。
  CO2分子の酸素原子の運動モードにより異なる発振波長をもつ。発振波長:9.4μm、10.6μm、放電励起の連続発振もしくはパルス発振。高周波で発信する場合には発熱を考慮し、パルス発振のデューティ比を変化させることで連続発振に近い発振をすることもある。高出力(数kW以上)、高効率(40%以上)。マーキング、切断、穴あけなど加工用の他に、水への吸収が良いことから外科手術のレーザーメスなどにも用いられる。
  1964年ベル研究所のパテルが発振に成功。


     
  銅蒸気レーザー   He Neなどの希ガスの中に入れた銅を放電によって加熱し、蒸気中で放電励起することでレーザーを発振。
  発振波長は510.6nm、578.2nmでパルス発振。セラミックス管の不安定共振器につめられた媒質のゲインが高いので数十W以上と平均出力は高くできる。高繰り返し発振。加工用の他に、超高速度カメラのストロボ光源などにも用いられる。ランニングコストが高いためあまり使われていない。同じく金属蒸気レーザーとしてはHeCdレーザーなどがある。


     
  Ti:サファイア
レーザー
  Tiをドープしたサファイア結晶を媒体としたレーザー。
  波長が可変で、結晶の温度上昇により、長波長側にシフトする。660~986nm。代表的な固体波長可変レーザー。ポンピングレーザーとしては、アルゴンレーザーやNd:YAG、Nd:VO4の第2高調波などが利用される。OPOに利用される。フェムト秒レーザーとしての利用が多くチャープパルス増幅により数kHzの高ピークパワーのフェムト秒パルスを利用できる。


     
  ファイバー
レーザー
  共振器がファイバーでできているレーザーの総称。YbイオンやErイオンをドープしたシングルモードファイバのクラッド2重構造を使用し、内側のクラッドにLD(発振波長808nm~975nm)でポンピングした励起光を入れる。
  媒体の冷却効率が非常に良いので、熱レンズ効果がほとんどないのが特長。発振波長は1030~1100nm。複数のLD光を結合するコンバイナを使用することがある。また、ファーバーレーザーからLDへの戻り光を遮断するために、励起用LD(915nm)を透過させファイバーレーザー光(1090nm)をバンドパスフィルタを挿入してある。光変換効率も高いので、消費電力も比較的小さい。


     
   


     
  基本構成   ・レーザー発振器・光路・集光系・アシストガス・位置合わせ機構・吸引系・駆動系・制御系・筐体・ハウジング/カバー・安全性


     
  レーザー発振器   材料を除去するエネルギーを供給するレーザーを発振する装置。加工対象(材質、厚さ等)、求められる加工精度(デブリ、テーパー、面粗さ等)、加工速度、コストによって、レーザー出力、波長、価格などを考慮してレーザー発振器が選定される。


     
  光路
(BDU、Beam Delivery Unit)
  レーザーを発振器から集光光学系まで導く装置。
  ファイバーを用いるものやレンズ・ミラーを組み合わせた固定光学系がある。レーザーのゆらぎを抑えたり、光学部品の寿命を伸ばすために、光路を窒素で充填したり真空にした構成も見られる。


     


     
  アシストガス   アシストガスは、目的に応じて「酸化を促す」用途と「酸化を抑制する」用途がある。
  ①酸化を促す用途では、酸化反応熱を積極的に加工促進に用いるため酸素ガスを高速で吹き付ける。切断用途で多用される。
  ②酸化を抑える用途では、溶融金属の酸化を防ぎ、飛散を防止するため、不活性ガス(アルゴンやヘリウムなど)を緩やかに吹きかける。溶接用途での利用が多い。一方で、切断であっても加工表面に酸化皮膜を抑えるため、窒素ガスを吹きかける無酸化切断も実施されている。また、アシストガスには、飛散物を取り除きながら加工精度を向上させる効果を狙う場合もある。


     
  吸引系   レーザー加工は、加工時に飛散物が飛び散ることが普通である。この飛散物が加工対象に再付着し加工精度を悪化させたり、余計な熱影響を与えることを避けるために、飛散物を吸引する。
  飛散物によっては有毒な物体も含まれるため、吸引後にフィルターで飛散物を取り除いてから空気を室内に還流したり、全く別室で処理する場合がある。また、特に樹脂を加工した時には臭気が発生する場合がある。この時には、脱臭装置を設置して匂いの問題を取り除く対策もとられる。排気ガスに有害物質が含まれる場合にはその対策も必要である。


     
  位置合わせ機構   加工対象の所定の位置へ加工を行う場合には、まず加工対象の位置を確認し、加工用レーザースポットをその位置へ相対的に移動させる必要がある。加工対象の位置を確認するためにレチクル付きのカメラ画像を用いる場合が多い。観察方式としては、カメラとレーザーの光軸が同一のon-axis観察系とoff-axis観察系、また、ガイド光の利用がある。
  on-axis観察系では観察している位置と加工する位置が同一のため高い加工精度を実現しやすく、観察から加工に移行する時間が短いというメリットがある。しかし、レーザーの波長と観察用照明光の差をなくして加工も観察もできる光学系の設計技術が必要である。
  off-axis観察系は装置設計が簡単というメリットがあるが、観察系とステージ精度に応じた程度の位置合わせ精度しかなく、位置観察からレーザー加工に移行する際に時間がかかるというデメリットがある。特に、加工点が多くなるとその影響は大きくなる。
  簡易的な位置合わせであれば、He-Neレーザーなどを用いたガイド光を使う方法がある。ガイド光と加工用レーザー光の光軸を合わせておけば、手軽に目視で位置を合わせやすい。ただし、位置精度がmmオーダーと微細加工には適さない。


     
  駆動系   レーザー加工中や加工前後において、加工対象をレーザー照射位置から相対的に移動させる必要がある。そのための方法としては、次の3種類あり、所望の精度や生産量、加工対象の取り扱い形態や方法を考慮し最適な手段を選択する必要がある。
  ①ステージタイプ:直交したXY直動ステージの組合せ、回転ステージなどから構成され、加工対象を移動させる方式。また、平面内で多自由度の移動が可能な平面モータが採用されるケースもある。XYステージタイプは構造が簡単ため、最も標準的なレーザー加工機に使用される形態。加工はステージの停止時もしくは移動中に行われる。大型の装置で加工精度を高めやすいのは、門型(ガントリー)タイプである。加工対象を一軸(Y軸)方向にのみ移動させ、レーザー出射口はX軸方向への移動機構がついたガントリーに設置される。両軸の組み合わせにてXY走査を行う。両タイプとも高速な走査を実現するためガルバノスキャナーを併用するタイプもある。ステージは、センサで位置を検出しながらフィードバック制御する高精度タイプ(フルクローズド制御、セミクローズド制御)と、ステージには司令を与えるだけでフィードバック制御を行わないオープンループ制御がある。センサとしてはステージガイド脇に設置される光学式、磁気式リニアエンコーダや、回転モータの回転角を検出するロータリエンコーダ、レゾルバなどがある。より高精度な位置検出を求められる場合にはレーザー干渉計が用いられる。制御方式としては、PIDやPI制御が一般であるが、H∞制御など現代制御を用いる装置もある。
  ②ロール・トゥ・ロールタイプ:加工対象がロールに巻かれているWebの場合、ロールから巻き出し、最終的にロールに巻き取る間にレーザーで加工する形態。Webを間欠的に送り停止中にレーザー加工する場合と、Webを連続的に送りながらレーザー加工する方法(on-the-fly)の方法がある。大面積の加工を高速に低コストでできるというメリットがある。しかし、加工対象の位置決め精度はステージタイプより劣る。Web上のアライメントマークを読み取り、その位置に合わせて加工を行うことで加工精度を向上させる仕組みもある。Webを送る際には、張力や速度をリアルタイムで制御する必要がある。このため、各種センサを適切な場所に設置し安定したWeb送りを実現している。
  ③ベルトコンベアタイプ:ベルトコンベアの上を加工対象が流れていき、それに対してレーザー加工する形態。加工対象を完全には固定しておらず、位置ずれなども生じやすいが、連続的に大量の加工を行う場合には有効。ロール・トゥ・ロールとは異なり、加工対象を単品で手軽に扱うことができる。
  ④ロボットタイプ:産業用ロボットの先端にレーザー出射口を設け、ロボットの動きに合わせて加工ができるタイプ。一般にロボットは多関節・多自由度であり、加工対象が自由曲面であってもそれに追従して移動できるので、非常に自由度の高い加工ができる。しかし、自由曲面に沿って移動した時の位置精度はそれほど良くなく、ポイントーポイントでの位置決めのほうが得意としている。


     
  制御系   レーザー加工機専用のソフトウエアにより制御することが多い。多くのソフトウエアは各機構を個別に制御するのではなく統合的に扱えるようになっており、ユーザーの意図した動作を司令するだけで各機構に司令が適切に行き渡る構成となっている。業界標準のデータを扱える場合が多く、DXFやGコード、ガーバーなどが直接読み込める。多機能なソフトウエアの場合には、読み込んだ後にそのまま編集できる場合もある。また、プログラム言語を実行できるソフトウエアもあり、ユーザーがより柔軟な加工を望む場合には有効である。
 また、安全面も非常に考慮されており、準備が不十分であったり、各機構が正しく動作しない場合にはレーザーが出射しないインターロックが付けれている。各レベル毎にアクセスを制限できる機能もある。例えば、オペレータ、エンジニア、サービスなどそれぞれの役割、能力に応じて操作できる機能に制限を設け、安全や装置のレベル分けができる機能もある。


     
  筐体   特に加工精度や生産安定性を確保する上で筐体の構造設計は重要である。温度・湿度変化や振動など物理的外乱によりレーザー加工機の構成要素が物理的に変位・傾斜すると加工結果に大きな影響が与えられる。これらの影響をなるべく抑えるために、構成要素はグラナイト(花崗岩)の上に配置され、しっかりと固定される場合が多い。
 筐体自体は除振装置に載せられ、床面からの振動を除去している。除振装置にはアクティブタイプとパッシブタイプがあり、アクティブタイプは広い帯域に渡り振動を抑える効果があるが高価である。一方のパッシブタイプは安価であるが、周波数によって除振性能が異なる。
 設計コンセプトとしては、必要な機能を搭載すべきであるが、レーザー光源から加工対象点までをなるべく小さくすると加工精度を向上される点で有利である。


     
  ハウジング/カバー   特に加工を行うレーザーは出力が大きい場合が多く、人体に損傷を与える危険性がある。そこで、ハウジング/カバーでレーザーが外部に漏れないようにしておく必要がある。レーザー加工機全体をカバーすることが難しい場合には、加工機全体をレーザー漏れがなく厳重に管理された小部屋のような施設に設置する場合がある。適切な場所にインターロックスイッチを設け、ハウジング/カバーが開放状態ではレーザーが出射しない措置をとる必要がある。カバーには金属が多用されるが、反射を抑えるために塗装やメッキなどのコーティングを行う場合がある。また、装置内を確認する窓やレーザーの波長によっては、ガラス・樹脂などに特殊コーティングされた部材が用いられる場合がある。


     
  安全性   日本工業規格(JIS)によって昭和63年11月にJIS C6802「レーザー製品の放射安全基準」が制定され、平成9年12月にはJIS C6802「レーザ製品の安全基準」と改定された。その後数度の改正を経ている。この基準により製品化されたレーザー加工機は安全性が飛躍的に向上してきた。レーザー加工機を設置する際には、レーザー管理区域を設定し適切な管理を行うことで安全を確保する必要がある。エンジニアやサービスでレーザーを保護設備なしで使用する場合には必ずレーザー用保護メガネをかけ、特に目への損傷を防ぐ必要がある。また、レーザーが照射される可能性がある場所には、燃えやすいものを置かないべきである。


     
   


     
  加工対象   レーザーは、ほぼすべての材料を加工できるという大きなメリットがある。材料毎に波長吸収性が異なるので加工速度や品質は材料依存であるが、基本的に除去加工は可能である。加工で重要なことは、「加工点にレーザーが到達でき、十分なエネルギーを持っていること」である。したがって、加工対象点がレーザーが到達しないブラインド形状になっていると加工できない。また、除去された材料が堆積し、加工を妨げる時には、適切な手段で取り除かないと品質が低下することもあるので注意が必要である。また、材料を除去するために十分なエネルギーを持っていることも重要である。例えば、アブレーションを発生させるには1J/cm2以上必要と言われている。これより低いエネルギー密度でも加工はできるが熱影響が大きく、加工品質が大きく低減する。


     
  加工応用   レーザーを使用した除去加工をその応用から分類すると以下の形態となる。
・穴あけ(Drilling)
・スクライブ(Scribing)
・溝加工(Engraving)
・マーキング(Marking)
・切断(Cutting)
・溶接(Welding)
・焼結(Sintering)


     
  加工プロセス   レーザーによる加工は、熱的加工と光化学的加工に大別される。

○熱的加工

 ・レーザーによる加熱加工対象材料は、レーザーエネルギーを吸収することで昇温する。材料の表面温度は、初期温度、レーザーパワー、表面吸収率、熱拡散係数、熱伝導率、レーザー照射時間の関数である。このうち、表面吸収率は波長によって異なり、一般に有機系材料は長波長の吸収が良く、金属材料は短波長で吸収が良い。さらに吸収率は温度依存性があり、高温ほど吸収率は高くなる。

・材料の表面温度による加工の違い
 ①融点以下:焼入れなどの表面硬化
 ②融点以上:溶接、グレージング(アモルファス化)、アニーリング
 ③沸点以上:蒸散(穴あけ、切断、スクライブ、マーキング)

○光化学的加工

・レーザーエッチング:紫外域のエキシマレーザーを高分子膜に照射すると、高分子の化学結合鎖が切られて、照射部が除去され、直接エッチングできる。
・レーザードーピング:有機金属ガスは、エキシマレーザ照射により解離され、遊離した金属原子を基板中に直接ドーピングできる。
・レーザーデポジション:エキシマレーザーにより、光解離あるいは光化学反応を解したCVDによる薄膜形成が可能である。低温で、高速に、局所的に微細膜形成ができる。
・レーザー重合:Arイオンレーザーの第2高調波を用い、MMA(methyl methacrylate)を重合し、PMMA(poly MMA)膜を局所的に形成する技術もある。